インドネシア泥炭復興庁の設置と環境保全ビジネスの提案

先日、「泥炭地回復にむけて日・イ環境ビジネスワークショップ」が開催された。今回は、その内容の一部をご紹介したい。

世界には巨大な泥炭地が存在する。北ヨーロッパやシベリア、カナダなどの北方泥炭は主にミズゴケや草本から形成されているが、インドネシアなどの熱帯泥炭は木質遺体で構成されている。インドネシアの泥炭地は、スマトラ、カリマンタン、スラウェシ、パプアなど広域に存在し、延べ24,667,804ヘクタールにものぼる。広大な森林と泥炭地を抱え、その消失が進むインドネシアの場合、生態系から排出される温室効果ガスは、全排出量の78%を占めており、これら生態系からの排出量を含めると、中国、米国、ブラジルに並ぶ排出国となっている。

世界の熱帯泥炭地の半分を抱え、炭素の貯蔵庫としての役割も果たしているインドネシアの泥炭地は、「地球の火薬庫」とも呼ばれるようになり、泥炭地保全の問題はインドネシア一国の問題をはるかに超え、今や世界規模の課題となっている。

例年、パルプやパーム油のプランテーション企業による野焼きなどによって度々大火災が発生し、近隣諸国に煙害をまき散らしてきたが、とりわけ2015年はエルニーニョ現象による乾燥が雨季を遅らせたことで火災の発生に拍車をかけ、11月時点で火災は12万件を超え、17億5千万トンのCO2が大気中に排出された。隣国にも煙害による大規模の損失を与え、同年12月のパリ協定を目前に、インドネシア森林火災と泥炭地破壊の現状が大きくクローズアップされた。

インドネシアはすでに2010年に温室効果ガスの削減目標を設定、2015年12月のパリ協定では2030年までに41%削減達成を約束するなど積極的な姿勢を示し、2013年には「気候変動適応のための国内行動計画」の策定、2015年の大火災の受け、COP21においてジョコ大統領は新行政庁の設置を約束した。

これらの経緯から、インドネシア政府は昨年(2016年1月)「泥炭復興庁」が設置した。

今回のセミナーでは、この泥炭復興庁から協力企画副長官のブディ・ワルダナ氏が基調提案を行い、同庁の研究開発副長官のハリス・グナワン氏がモデレーターになり、試験的に始まった泥炭地復興農業について事業研究チームのムハマッド・ヤジッド氏から実践報告があった。またこのような地球的規模の環境保全ビジネスについては世界からの投資や協力なしに実現できないので、泥炭地復興に関する経済特区および日本・インドネシア2国間の協力などについて、経済担当調整省投資促進課のユニ・S・ニングシー課長から簡単な事業紹介があり、また日本からは京都大学東南アジア研究所の水野広祐教授がインドネシアの経済発展と持続可能な泥炭地復興の重要性について、さらに同研究所の甲山治准教授からは、具体的な泥炭地生態系の回復ための再湿地化と在来種植林による回復と住民の生計向上についてこの間の取り組みが紹介された。

ここでは簡単に当日の提案内容についてご紹介する。

 

<泥炭地回復のための主な事業とその現状について>     泥炭復興庁

今回のテーマの第一は、すでに乾燥化が進み危険な状況にある泥炭地の再湿地化を図り、1、泥炭地復興を継続させることができる作物栽培の可能性、2、泥炭地由来の製品を活用するビジネスの可能性、3、洪水対策や水源確保のための環境サービス、4、森林事業開発者のための環境金融など4つの開発提案を3つの州(南スマトラ、中央カリマンタン、リアウ)で展開していることが紹介された。とりわけ泥炭地復興とその持続に役立つ作物栽培のこの間の実績について紹介された。

主な作物は米、サゴやし、ビンロウ(Betel Nut)、コーヒー(リベリカ種)、クナフ(洋麻)などの作物栽培が紹介され、栽培はもとより、加工技術の提供、輸出販売などビジネスへの参加が呼びかけられた。

 

 

 

 

<経済特区(KEK)について>             経済担当調整省

インドネシアでは泥炭地以外でも地域の経済開発に伴って、経済特区が設けられており、2016年10月の現時点では、全国で11地域に経済特区が設定されている(法的根拠:財務大臣規定PMK104/PMK015/2015)。

ここでの投資について、タックスホリデー(5-25年間、20-100%減税など)が認められる産業分野があったり、輸入関税の延期ユア付加価値税(PPn)や贅沢品販売税(PPnBM)の免除や輸入時の前払い所得税の免除、一部関税の免除などや、輸出にさいしては輸出税の免除などの様々な利点が、条件によって、用意されている。このような減税、免税以外にも、貨物の輸送や労働、入国管理サービス、土地などの分野でも、いくつもの利点がある。例えば、経済特区には特別賃金審議会および経営者・労働組合・政府の三者機関が設置され、一会社一労働組合が適用される。またRPTKA(外国人就労計画書)の認証および延長が特区内で行われ、またIMTA(就労許可申請・取得)も特区内で行うことができる。さらに到着ビザ(30日滞在)から5回最新可能で、観光経済特区内に不動産を所有する外国人用の特別在留許可資格も与えられるなど、様々な利点が用意されている。

特に有効で現実なサービスとして、投資許可の簡素化スピード化が実行される。皆さんもご承知のように、法人の設立許可はもとより、法人税番号の取得だけでも何か月も待たされる現実があるが、特区では3時間で法人活動および就労が開始できる各種認可が簡素化され提供される。詳細はインドネシア共和国経済担当調整省まで。

 

<持続可能な泥炭地復興、そのためにも>        京都大学東南アジア研究所

セミナーの最後に、甲山准教授から泥炭地再湿地化を実現し、それを維持していくためには、地元住民の生活向上と彼らとの共同作業が重要であることが示された。

まず泥炭地火災の原因は、野焼きによるものばかりではなく、もともと湿地であった泥炭地が開発によって排水が進み乾燥化したことに大きく起因しているので、まずは乾燥した泥炭をもとの湿地に戻していく作業が重要であること。また乾燥泥炭を生み出すようなアブラヤシやアカシアの栽培を減らし、泥炭と親和的な農作物や植樹などを徹底する必要があることが指摘された。

スマトラのリアウ州、タンジュンルパン村では、地元住民とリアウ大学の協働の手による簡易ダムの設置によって水分の流出を防いだり、地表面温度を低下させ、また火災延焼リスクを下げるのに効果がある在来樹種の植林も進められつつある。泥炭地で暮らす地元住民の生活が向上することと、泥炭地の維持、回復のための方策を一体化することが重要であること。今回、JICA草の根技術協力事業(5年間で1億円)が決定されたことで、泥炭生態系の回復にむけて更に課題解決の方策が具体化されていくものと思われる。

 

今回の泥炭地復興ビジネスのテーマは、私自身、学習不足でセミナー発表のほんの一部しかお伝えできませんでしたが、大好きなオランウータンがいよいよ住めなくなるインドネシアの熱帯雨林、このジャングルを守ることが地球温暖化にブレーキをかける重要な鍵であること、そのためにも乾燥化しつつある泥炭地を再湿地化させるこのような経済活動が重要な意味を持っていることが知ることができて良かったです。    (文責:高木典子)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です